軍艦島は、風化し続けてこそ価値がある。風化をとめた軍艦島は安っぽいテーマパークだ。 #36

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本日、長崎市が今後30年間で108億円を投じて軍艦島を保全する、との新聞報道がありました。
 
軍艦島に手を加えるなんてもったいないというのが、私の率直な感想です。
 
建物に保存加工を施した時点で、その建物の価値は「死んでしまう」のです。軍艦島は、「廃墟っぽいテーマパーク」に成り下がってしまいます。これ以上風化しなくなり、飾り物になってしまいます。
 
これまでの風化の積み重ねがあって、今の軍艦島があります。そしてこの先も風化を重ねることで、まだ見ぬ軍艦島を見ることができるのです。
 
人は、風化し続けるその姿に軍艦島の魅力を感じるのです。今日軍艦島に来た人が、20年後に再来し、その姿が20年前と全く変わっていなかったとしたら、果たしてこの島に魅力を感じるでしょうか。
 
崩れゆく文明をリアルタイムで観察できる壮大な実験場。海に囲まれ、不法進入などのリスクが低い。崩れた建物をそのままにしておいても、人に危害が及ばない。この場所は建築物の風化の過程を長期間観察できる最高の条件を備えているのです。
 
手を一切加えず、長い年月の後、この島が元の岩礁に戻るまで見届けるのが、「軍艦島の正しい活用法」です。

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